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2008年12月 1日 (月曜日)

【小説】10年後の約束

 

コートの襟を立てて歩く人々、街を彩るクリスマスイルミネーション、そして寄り添う恋人たち・・・。

極彩色の季節とは違い、街を行きかう人々の装いも、冷たい空気を象徴するかのよう。

その日は昼過ぎから雪が降っていた。

都会の冬に雪は似つかわしくない、ジローはそう思う。

「いや、待てよ。全てを・・・、そう、全てを真っ白に包み込んでしまうのなら、こんな街に降る雪も歓迎じゃないか」

ジローはそう言ってコートの内ポケットから、くしゃくしゃになった煙草とダンヒルのライターを取り出すと、煙草を口にくわえ雪の舞い落ちてくる空を仰いだ。

洗いざらしの髪に少しくたびれたスーツ、ネクタイはせず胸元まで開けたYシャツのボタン、無精ひげをたくわえたジローに不釣合いとも見えるそのライターは、祖父の形見である。

「幼い頃は、爺さんに注意してばかりだった気がするけどな・・・」

煙草に火をつけながら、ヘビースモーカーだった祖父を、ふと思い出したジローのその呟きも、街に流れるクリスマスソングと、都会の喧騒にかき消された。

ここは背の高いビルに囲まれ、3つ街道が交差するスクランブル交差点。

特に目だったランドマークは無いが、ジローの仲間内では「あの交差点」で通じる場所だ。

学生時代を友人たちと過ごしたこの街。しかしながら、挫折と再起を繰り返すことになったこの街は、ジローにとってはあまり良い思い出のある場所ではなかった。

 

「おーい、お待たせー!ジロー!久しぶりねー!!」

赤信号の点る交差点の向こうから、赤毛の髪を揺らし、手を振りながら大きな声でジローにアピールしている女がいる。

信号が青に変わると、少し駆け足でジローの元へとやってきた。

「ごめんねー、少し遅刻しちゃった。ジロー、私のことわかった?私はすぐわかったわよ!・・・ん?」

笑顔で話す彼女の顔が急に曇ったのは、お気に入りのブーツの靴底に違和感を感じたからだ。

「もう・・・、だめじゃない。街はジローのゴミ箱じゃないのよ?」

そういって、ジローの足元に転がる煙草の吸殻を拾い始めた。

相変わらずのお節介だな、赤毛も昔のままだ・・・。ジローはそう思うと、仏頂面で、腰をかがめる女の髪を見ていた。

女は落ちている吸殻を全て拾い集め、バッグから取り出したハンカチに包むとジローに向き直った。

「ねぇ、ジロー。いま、『相変わらずのお節介女』ってそう思ったでしょ?」

「え?」

見透かされてしまったことに動揺を覚えながらも、ジローは昔となんら変わらぬ旧友を見て、思わず笑みがこぼれた。

「ふ、ふふふ」

「なぁに?気持ち悪い人ね・・・私の顔に何かついているの?」

「いやぁ、ニコ。たしかに君は相変わらずだなと思ってね」

ところ狭しと歩道を行きかう人々をよける様にして、ジローの横に立ったニコがため息混じりに返事をする。

「あなたも相変わらずね。その無愛想さは昔のままだわ。そしてマナーがなっていないのもね、もう大人でしょ?どうにかならないの?」

ニコの説教を聞きたくなかったジローは、その問いかけに答えることなく、約束の時間を過ぎても現れないベルとイースのことを話し始めた。

「そんなことより、ベルとイース、ちょっと遅すぎないか?」

「あぁ、うちの人なら、仕事が終わってから駆けつけるって。ベルは・・・どうなのかしら?もしかしたら約束を忘れてしまったのかしら?」

忙しかったから・・・それは言い訳に過ぎない。自分だけが取り残されてしまった、そんな劣等感を感じてしまう卑屈な自分が嫌で、ジローが彼らに会うのは卒業式後のパーティー以来だった。

ジローにとっての二人はあの時のまま・・・、そう十年前の彼らしか記憶にないのである。

 

 

 

 

「おい、ジロー。ニコのやつ、お前に気があるみたいだぜ。せっかくのイヴなんだし、誘ってみろよ!」

いやらしい笑いを浮かべ、昼食の乗ったトレーをテーブルに置きながら横に座り、イースがジローに肩を組んできた。

「あん?そんなわけないだろ?それにあんなお節介女、こっちから願い下げなんだよ」

トレーに乱雑に並べられたプレッツェルとポークビーンズを頬張りながら、ジローはイースの腕を振りほどいた。

「そうかなぁ、イイ女だと思うんだけどなぁ・・・。お?旨そうだな、いただき!」

イースはジローの目の前にあるトレーから、獲物を狩る隼のような速さで最後のプレッツェルを掠め取った。

「あ、このやろう!お前とメシを食うといつもこれだ!自分で買って来いよ!」

幼馴染のイースとジローのじゃれあいは、いつものこと。

「ねぇ、君たち。毎度毎度のことで飽きないの?仲良しなのは良いことだけどさ・・・」

ジローとイースの向かいに座り、大好きなバナナパイを食べながら、ベルは呆れていた。

「そういうベルだって、いつもバナナパイで飽きないのか?」

「大好きだから、いいんだもーん」

そういって、ベルは2つ目のバナナパイを口に運び、健康的な褐色の肌に白い歯を浮かび上がらせて幸せそうに笑った。

「ベル、あなただって周りから見れば、ジローたちとじゃれているようにしか見えないわよ」

いつの間にかベルの後ろに立っていたニコが、ベルの頭を突っついた。

「あ、ニコ、遅いよー!もう食べ終わっちゃうところだよ」

「ごめんごめん、留学のことで教授に呼び出されちゃってね」

「そうかぁ、ニコは卒業後すぐに留学だったな。寂しくなるな・・・」

「イースありがとう。でもね、ずっと会えなくなるわけじゃないわ。それに、2年なんて、忙しくしていれば、きっと、すぐに経ってしまうと思うの」

「いいなぁ、ニコは目標があって。私なんて、やり終えていない研究があるから、ここの大学院だもん」

ニコは笑顔で答える。

「翻訳家になることは夢だったから。ベルだって、その研究って完成すればすごいことなんでしょ?」

「あはは、完成すればね。10年・・・そうね、10年かかっても完成しないかもね」

「このキャンパスとも、もうすぐお別れかぁ。卒業まであっという間だろうな」

イースが室内を見回しながら、寂しそうに呟いた。

「そうだな・・・。俺はまだ何も決めていないけど、ニコは留学、ベルは研究、イースも実家に戻るんだよな?」

ジローも感慨深げに室内を見回した。

「10年か・・・。よし、約束しようぜ!10年後の今日、そうだな時間は夜の7時丁度、いつもの交差点でまた会おうぜ!」

「10年後のクリスマスイヴ・・・いいなそれ!よし乗った」

ジローとイースはハイタッチを交わして、ニコとベルに向き直り二人の返事を待った。

「10年後ね・・・、うん、OK!それまでに立派な翻訳家になってみせるわ!」

「私も10年後には、きっと研究を完成させる!それにここに残れば、いつでもバナナパイが食べられるしね!」

「あはははは」

 

 

 

 

 

ニコは向かいのビルに設置されている、大きな街頭スクリーンを見ていた。

時折映し出される時計の表示を見ながら、悴みそうな手に息を吹きかけている。

ジローは、10本目の煙草に火をつけるのを我慢していた。

時刻はすでに8時。スクリーンではニュースキャスターが、せわしなく街を行きかう人々に、今日のニュースを伝えていた。

 

「あれから10年経ったのね・・・」

「そうだな・・・。あ、結婚おめでとう」

語尾に行くにつれ、ぼそぼそとした声になってしまったジローの言葉だったが、ニコは頭の中で反芻すると笑顔になった。

「なぁに、改まって。ふふ、ありがとう」

ジローらしくないなと思ったが、旧友からの祝福が素直に嬉しかった。

「いや、式には行けなかったから、直接と思ってね。どうなんだよ、イースはいい旦那様をやっているのか?」

「最高の旦那様よ」

笑顔のまま腰に手を当ててふんぞり返り、さも自慢げに答えるニコを見ながら、ジローは少しだけ嫉妬を覚える。

「なんだよ、のろけかよ!はいはい、ご馳走さん」

その時、スクランブル交差点の信号が、赤から青に変わり、横断歩道を駆け足で渡ってくる個性的なヘアースタイルがジローの目に映った。

「はぁはぁ、お待たせぇ」

ずっと走ってきたのだろう、息を切らし、肩で呼吸をしている。

「あなた、もうお仕事は大丈夫なの?」

「うん、商談が長引いてしまってね。ごめんな」

「ちょ、ちょっと待て!イース、いまだにその髪型なのかよ!」

イースは、先ほどのニコと同じように腰に手を当ててふんぞり返り、当たり前じゃないかと鼻息を荒くした。

「あのなジロー、俺はアフロの頂点に立つ男だぜ?変えるわけ無いだろう?」

「おいニコ、いいのか?こ・れ・で?」

ジローが、イースのふかふかの髪に指を突き立てて、片方の眉を吊り上げる。

 

・・・より、嬉しいニュースが舞い込んできま・・・

 

「何よ、私の旦那様に「これ」は失礼じゃない?」

 

・・・さんが、化石燃料に変わる、画期的な新エネルギーの開発に成功し・・・

 

「だって、見てみろよ。この髪型はないだ・・・」

「ジロー、てめぇー!!」

「痛てっ!」

ジローがイースの髪を鷲掴みにしたので、イースもジローの頬を両手で引っ張る。

 

・・・さんの新エネルギー発表記者会見会場と生放送でつながっていま・・・

 

「やめなさいよ、あなたたち!こんなところで・・・恥ずかしいでしょ!」

 

・・・それでは、会場よりベルさんの発表をお届けします

 

 

「え!?」

 

 

イースの髪を掴むジロー、ジローの頬を引っ張るイース、二人を引き離そうと間に割って入っているニコ、3人の動きがピタリと止まり、街頭スクリーンに釘付けになった。

「おい!あれ見ろよ!ベルじゃないか!?」

「あぁ、ベルだ!間違いない!」

「ほ、本当にベルなの?すごい・・・すごいじゃない!!」

 

やっほー!ジロー、イース、ニコ、見てるー?

ざわつく会場を無視するかのように、スクリーンの中でベルは続ける。

今日は行けなくてごめんね・・・、でも、でも私やったよ!ついに完成しちゃった

スクリーンのベルを見て、人目をはばからず、ハイタッチを繰り返しながら歓声を上げる3人。

ジロー、手紙ありがとう!すごく励まされたよ。イース、いつも応援してくれてありがとう!ニコ、あなたの頑張りに、私も勇気つけられたんだよ!

「ベル・・・」

ジローは、スクリーンを見上げたまま、鼻をぐずっと一度だけ鳴らした。

「ニコー!ベルのやつすごいよ!本当にすごいよ!」

愛妻よりも背の低いイースは、ニコの肩に顔をうずめるように抱きついて、泣きじゃくっていた。

「ベル、頑張ったね・・・本当に、頑張ったね」

イースの髪をなでながら、ニコもスクリーンを見上げ、涙がこぼれた。

約束・・・10年前の約束、忘れてなんていないよ?君たちもそうだよね?今日はいけなくて、本当にごめんね

「いいんだよベル、最高の再会じゃないか」

ジロー、イース、ニコ、みーんな大好きだよ!メリークリスマス!!

「メ、メリークリスマス・・・グズッ」

「メリークリスマス」

イースは泣きながら、ニコは笑顔で答えた。

しかしジローは・・・。

「メリークリスマス・・・か。」

スクリーンから目を逸らし、うつむいてぼそっと呟やいたジローの顔を、ニコが心配そうに覗き込んだ。

「ジロー、どうしたの?何か悩み事かな?」

「悩み事かな?グズッ」

ニコに抱きついたまま、イースも泣きながら繰り返す。

「いや、そんなんじゃねえよ。ただ、みんな頑張っているんだなって・・・そう思ってさ。俺は・・・」

ジローの言葉を遮るように、ニコはわざと笑ってみせた。

「あはは、ジロー、あなた少しおかしいわよ?あなたらしくないわ。さぁ、美味しいものでも食べに行きましょう?」

「行きましょう?グズッ」

「あ、うん・・・。   そうだな!うん、そうしよう!!」

 

 

「バナナパイなんてどう?」

「この辺にバナナパイを出す店なんてあったっけ?」

ジローは、腕組をして歩き出した二人の背中を一瞥すると、記者会見を続けるベルを、今度は見上げて呟いた。

 

「メリークリスマス」

 

 

 

 

☆あとがき☆

皆さんこんばんは、ハルルです♪

今日から12月。これから、日ごとに寒さが増していきます。

皆さんも風邪などにご注意いただき、ご自愛下さいね。

 

さて今回の更新は、お友達のジローさん、イースレイさん、NIKOさん、BELLさんを登場人物に小説を書いてみました。

実は昨晩のこと、ジローさんたちに嬉しいサプライズをいただきました♪ありがとうございます(^-^)

とても仲良しのジローさん、イーさん、NIKOさん、BELLさん。私の中でのイメージを少しだけ(?)反映させて小説内でも個性をつけてみました。

あ、ジローさんだけは正反対かな???

12月に入ったので、クリスマスの街を舞台に、4人の友情をえがいてみたのですが、いかがだったでしょうか?

久しぶりに会う友人達、それが5年ぶりでも、10年ぶりでも、変わらずに楽しいおしゃべりや、素敵なひと時をご一緒できるのなら、それって幸せなことですよね(*^-^*)

ジローはもちろん、ニコ、イース、ベルにも今回の小説には書かれていない物語が存在します。でも、それはまた別のお話・・・。

4人が再会するまでには、どんな物語があったのでしょうね?想像して頂くのも面白いかなと思い、あえて描写は控えています。

ひとつだけ・・・

 

「あら!イース、どうしたの???」

大きなトランクケースを押しながら、北ウィング第3ゲート降機口から出てきたニコは、学生時代に見慣れたアフロヘアーを見つけ驚いた。

「いや、君を・・・ニコの乗った便がそろそろ着くころかなって思ってさ」

 

ふふ^^

アフロヘアー、可笑しい(^-^)

一途なイーさん、ボンさんを大切にね?

 

また機会があれば、グラールのお友達を登場人物に小説を書いてみたいと思います。

え?プスティス学園ですか?皆さん個性的すぎて難しいです。。。

 

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コメント

ありがとうね、楽しく読ませてもらいました。
風景が浮かんできて、すごくイメージしやすかったよ^^
なにはともあれ、ハッピーバースデイ♪

投稿: ジロー | 2008年12月 2日 (火曜日) 18時06分

ハルルさんThank you~^^
仲間を大事にするという気持ちは忘れちゃいけないんだなぁ。
何か色々伝わってきました(・ω・)ウンウン
ハッピーバースディ~♪

投稿: イースレイ | 2008年12月 2日 (火曜日) 19時53分

おー、有難う御座いますー
読んでて普通に情景が浮かんできました・・・

ともあれ誕生日おめでとう御座いますよー

投稿: NIKO | 2008年12月 3日 (水曜日) 01時30分

おーーー、読み入ってしまったぁ……
素晴らしい!ジーンと来ました^^

幾年月経っても色あせない友情、
でも確実に少しずつ大人になっていく、
ちょっと寂しくて嬉しい、
そんな感じが伝わってきました。

4人の学食でじゃれ合うところや
街頭の再会シーンがとても好きです。

是非また書いてくださいw

投稿: 雪の降る街 | 2008年12月 3日 (水曜日) 22時12分

>ジローさん
楽しんで頂けました?(^-^)
こういう物語もたまには良いでしょ?^^
ありがとうございます♪

>イースレイさん
ありがとうございます(^-^)
家族や、恋人もそうですけど、お友達も特別な存在ですよね^^

>NIKOさん
イーさんとジローさんおじゃれあい?は、グラールでもいつものことですよね^^
皆さん、うらやましいほどに仲良しですよね(^_-)-☆
ありがとうございます、よい思い出になりました。

>雪の降る街さん
ユキノさんこんばんは♪
ありがとうございます(^-^)
学生食堂や、街頭のイメージ、4人の過ごした年月も感じられるようにシーンを構成してみました。
また挑戦したいと思います^^


投稿: ハルル | 2008年12月 4日 (木曜日) 00時08分

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