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2014年4月 1日 (火曜日)

エイプリルフール

私は駅に戻ると、慌てているために震える指を抑え込みながらメールした。

“ごめんなさい、支度に時間が掛かってしまって三十分ほど遅れそうです。”

ほっと息をつき、電車に揺られながらスマートホンを見詰めていると彼からの返事が来た。

“よかったー。実は僕も出掛けに仕事の連絡が入って、同じメールをしようと思っていたんだ”

彼とのデートは二週間ぶり。本当は毎週会いたいけれど、忙しい彼を困らせるようなわがままは言えない。
結局、待ち合わせ場所には約束の時間より四十分ほど遅れてしまった。
ターミナル駅西口の大きな地下広場にあるポリスボックス。その前が彼と待ち合わせるときの私たちの定番。
広場に通じるコンコースを歩きながらポリスボックス前を伺うと彼が既に待っていた。
小走りで近付いてから歩を緩め、後ろからそっと彼の腕にしがみついた。

「ごめんなさい、待ちました?」
「ううん、僕もついさっき着いたところ」

私の頭のてっぺんからつま先までを眺めてから、彼は微笑みながら褒めてくれる。

「今日もすごくお洒落して来たんだね。可愛いよ」

遅刻への嫌味ではなく、素直に褒めてくれていることはその笑顔から分かる。だから、嬉しいし、ちょっと恥ずかしい。

「いつもよりも一時間も早く起きたのよ?でも、遅刻しちゃった・・・ごめんなさい」
「おれも遅れたんだからお互い様。それよりもお腹減った。美味しいイタリアンを会社の先輩に教えてもらったんだ。行こう!」

 

 

 

ここは、あるターミナル駅西口地下広場の一角にあるポリスボックス前。僕は恋人の到着を待っている。
お互いの仕事が忙しく、会えるのは二週間に一度くらい。無理をすれば週に一度は会えると思うのだが、それは彼女にも強いることになってしまうので、我慢している。
彼女からメールが来た。少し遅れるそうだ。きっと服選びにでも時間が掛かったのだろう。僕のために、と考えるのは思い上がりだろうか。
すぐに返信して彼女を待つ。このひと時も悪くない。
そういえば、来月は彼女の誕生月だ。
何をプレゼントしようか、どこで食事をしようか、などと考えていると後ろから腕に軽い衝撃があった。彼女だ。

「ごめんなさい、待ちました?」
「ううん、僕もついさっき着いたところ」

彼女はいつもお洒落だ。ワインレッドのニットのアンサンブルにピンクベージュのスカート、ブーツは僕が去年のクリスマスにプレゼントしたものだ。首には落ち着いた色調のレパード柄のストールをゆるく巻いている。
ポニーテールを結んだ大きなリボンは子供っぽくならずに、逆に良いアクセントになっている。

「なぁに?そんなにじろじろ見ないで。恥ずかしいから」

おどけてそう言う彼女への褒め言葉はいつも自然に口から出てしまう。
傍目から僕らはきっと馬鹿なカップルに見えていることだろう。でも、そんなことは気にしない。彼女に出会えて本当に幸せなのだから。

それから僕らはイタリアンのお店へ向かった。
ネットの口コミ情報などを調べに調べ上げて見つけた隠れた名店と噂されるお店だ。
美味しいものが大好きな彼女の喜ぶ顔が見られたら最高だ。

 

 

 

 

「母さん、初めての東京なのによく迷わなかったね」
「少し迷ったわよ。でもね、とても親切な人が案内してくれたのよ」

今日、田舎から母が上京してきた。
幼い頃に父を喪った僕を女手ひとつで育ててくれた母だ。
僕は高齢出産による一人っ子。大学入学のために僕が上京するときに見せた涙は今でも忘れられない。
そんな母を初めて東京のアパートに呼び寄せた。初任給は母のために使いたいと思っていたからだ。
年老いた母を右も左もわからない大都会に呼び寄せるのだから、上野駅まで迎えに行くとあれほど言ったのに、気丈な母はひとりで大丈夫だからと頑として聞き入れてくれなかった。

「本当は、すごく迷ったんじゃないの?今時そんな親切な子いるわけないよ」

それを聞いた母はおおきくため息をつきながら、幼いころの僕を叱った時と同じような口調で諭した。

「いいこと、よくお聞き。たとえ私の話が嘘だったとしても、それが何だと言うの。一人息子を心配させまいと思った母心をあなたはわからないの?優しい子に育てたつもりなのに」
「い、いや、母さん、そんな意味では・・・」僕の言葉を断ち切るように母は続けた。
「母さんは嘘はついていません。でも、もしそれが嘘だったとしても、あなたの前にこうして居るでしょう。誰にも迷惑はかけていません。それに私を案内してくれた人に対して、あなたの物言いは失礼です」

母は年老いても何も変わっていない。母であることはもちろん、父代わりもしてくれていた母は僕にこうしていろいろなことを教えてくれた。

「そうだね。ごめん母さん。それで、その親切な人はどんな人だったの?」
「大きなリボンが印象的な綺麗なお嬢さんでしたよ」

 

 

 

 

 

皆さんこんばんは、ハルルです♪

今日は4月1日、エイプリルフールですね。

いろいろな企業HPではジョーク記事がアップされています。「嘘をついてもよい日」に誰も傷つけない冗談は面白いですね(^-^)

そしてエイプリルフールには関係のない『素敵な嘘』もたくさんありますよね。誰かを傷つけたり、悪意をもって欺く嘘はあってはならないものですが、真実が全てにおいて最高の結果をもたらすものというわけではありません。

嘘は嘘でしょう、と仰る方もいらっしゃいますが、私は謙虚さからくるそれや、誰かを気遣う嘘は時として素敵な『優しい嘘』になると思います。

でも、嘘ばっかりはだめですよ?(^-^;)

今日の物語にいくつかの『素敵な嘘』が見つかりましたか?

 
 

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コメント

こんばんはです!ハルルさん!
ちょっとした一息に素敵なお話でしたよ!

ありがとうございましたでする!

投稿: りー | 2014年4月 3日 (木曜日) 21時30分

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