『暖かな雪の降る夜に』4・真実~中編~
「こいつだねぇ、順平に傷を負わせ、私達の仲間をやったのは!!」
オルガさんの怒声が響きます。
「その左目の傷・・・お前はあの時の!!!」
そう言ってニーナさんはナックルを構え、誰よりも先に走り出していました。
「ニーナさん待って!」
私の制止も聞かず、我を忘れたようにモンスターに突撃するニーナさん
「私達だけでは無理です!オルガさんは順平さんをお願いします、私達で牽制します!」
「あ、うん、分かった、頼んだよ!」
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「あら、ルージュさんいらっしゃい」
優しく品のある口調の初老の婦人は、我が娘を迎えるように笑顔のまま、小柄な赤い髪の女の子を玄関先で抱きしめた。
「お母さん・・・そんなにされたら痛いよ」
「ルージュさんがあまりに可愛いからつい・・・ごめんなさいね」
「やだもう、んふふ」
「ふふふふ、今日はどうしたの?」
「はい、お料理を教えてもらいにきました。またお願いします」
「もちろんですよ・・・でも、それだけ?今日のルージュさんはお料理を教わりに見えただけ?」
そう言って年齢にそぐわないような悪戯な笑顔を作り、首をかしげた。
「え!?・・・あの、その・・・」
「ふふふ、いいわ。もうすぐあの子も帰ってくると思いますよ。先にお買い物にお付き合い頂けるかしら?」
元気良く「はい!」とルージュは答え、二人は今夜のバースデーパーティーのための買い出しに大きな市場のある近くのシティまで出かける準備を始めた。
準備も終え、シティ行きのシャトルバス発着所まで、二人は仲の良い本当の親子のように腕を組みながら、楽しいおしゃべりを止めることなく、のんびりと歩いていた。
その日のモトゥブの日差しは柔らかく、この時までは優しいものだった。
惑星モトゥブ一番の大都市ダグオラシティ。
ルージュたちが市場のある違うシティに向かっている頃、ダグオラシティのジュエリーショップに、不慣れな場所に戸惑いながらも、かがみ込んで真剣な眼差しでショーケースを覗き込むビーストの青年がひとり。
「う~ん、やっぱ定番でいったら指輪なんだろうけど・・・ルージュがしているの見たことないな、大丈夫かなぁ・・・」
アルバイトをしてコツコツと溜めた予算はそれほど多くはない・・・しかし、青年の暖かな気持ちを伝えるには充分過ぎるもののはずだ。
「何かお探しですか?」
優しく問いかける女性店員にどぎまぎと照れながら、
「あ、あの・・・彼女に、そう、大切な女の子への贈り物なんです」
ビースト青年は女性店員の微笑みを見て、顔が真っ赤になってしまった。
「こちらはいかがですか?」
「うーん、どうしよう・・・ちょっと足りないな。。。」
「お客様、お相手のお誕生月は何月でしょう?」
「はい、7月です!正確には彼女も知らないみたいですけど・・・夏の似合う元気な女の子なんです!小柄で、ちょっとクセっ毛の赤い髪とグリーンの瞳が可愛いんです。それに、誰よりも思いやりがあって、そして誰よりも・・・」
「あの・・・お客様?お誕生月だけで結構ですよ」
「あ・・・」
年上であろう笑顔の女性店員の言葉に、さらに顔を赤らめるビースト青年。
“顔から火が出る”とは正しく彼の状態をいうのだろう。
「ふふ、7月でしたら、お客様のお顔と同じ真っ赤なルビナードがお誕生石ですよ。先ほどのディアードよりも、お求めやすいお値段でご提供しておりますが、ルビナードの指輪はいかがでしょうか?」
「はい、見せてもらえますか?」
青年は店員との数回のやりとりのあと、大満足でジュエリーショップを後にした。
手にはキレイにラッピングされた小さな包み、足取りも軽く帰路を急ぐ。
「ルージュ、びっくりするかな。俺の誕生日なのに、俺からプレゼントなんて」
市場のあるシティまで、砂漠地帯を横切りシャトルバスでおよそ小1時間ほど・・・休日ということもあって、車内はほどよく混雑していた。
「ルージュさん、今日はおチビさん達の面倒は良かったのですか?」
「はい、今日はお天気も良いので父たちがみんなを連れて出かけています。」
「ジョンさんとサーラさんも大変ね、皆やんちゃざかりでしょ?」
「ふふ、そうですね。でも、彼らには・・・両親にはとても感謝しています、言葉では言い表すことが出来ないぐらいです。」
「そうね・・・ジョンさん達、子供たちが大好きだから・・・お二人はお子さんには恵まれなかったけれど、そのおかげで、うーん・・・おかげといえば語弊はありますけど、あなたをはじめ今はたくさんの、大切で、そして可愛い子供たちに囲まれて暮らしているのだから幸せだと思いますよ」
「はい、賑やかな毎日で笑顔が絶えませんから、両親も本当に・・・」
バリバリバリドガガァァン!!
ルージュが言いかけた時、巻き上げられた砂塵と、凄絶な爆音と共に、彼女の目の前で一瞬乗客がスローモーションのように座席から浮いたように見えた。
目の前は回転し、ルージュ自身も座席から身体を投げ出され、今は先ほどまでシャトルバスの天井だった場所に横たわっていた。
「痛っ!」
幸い気を失うことも無く、もたげた頭に少しだけ鈍痛が走った以外ルージュは軽症であった。
「ル、ルージュさ・・ん・・・」
何事が起こったのかも分からず辺りを見回すと、散らばった荷物の向こう側、同じように投げ出された人の山に埋もれ、ルージュに手を伸ばすブラムの母の姿がそこにあった。
「お母さん!!いま助けますから!!!」
「だ、だめよ・・・ルージュさん・・・危険よ早く逃げて」
「お母さんを置いてそんなこと出来ません!!」
意識のある者は声にならない悲鳴を上げながら、逆さまにひっくり返ったシャトルバスのまだ潰れていない窓から次々に逃げ出していた。
ルージュがブラムの母の腕を掴み、足場の定まらない体勢で懸命に助けようとしていたその時、転倒したシャトルバスにゆっくりと、そしてとてつもなく大きな足音が近づいて来ていた。
「な、何!?」
ルージュは窓の外を覗いて驚愕し、言葉を失ってしまった。
肩と頭頂部、背中までを岩のようなゴツゴツとした突起が並んで覆い、鋭い爪を持つ屈強な筋肉の塊である長い腕、見た者に禍々しさを感じさせる蝙蝠のような大きな翼、そして狂気をそのまま形にした顔つき、体躯は20mを越え、見る者全てに畏怖の念を抱かせる。
今、子供に弄ばれた玩具のように転がったシャトルバスに近づくのは、モトゥブ最凶最悪の巨獣ディマゴラスだった。
ディマゴラス同士での戦闘でだろうか、あるいは・・・・・・大きな傷で潰れた左目、残された右目でルージュを睨みこちらに向かってくる!
「ルージュ・・・さん、お願い・・・逃げて・・」
はっと我に返り、首を左右に振りながら、愛しい人の母とディマゴラスを交互に見るルージュ・・・
「わ、私は・・・もう無理よ、このままでは二人とも危険です、私を置いてお逃げなさい」
「そ、そんなこと・・・」
「あの子に・・・あの子に伝えて、息子があなたであったことが私の誇り・・・そして誰よりも愛していると・・・」
「嫌、嫌よ!誰か・・・誰か助けて!!」
ルージュにはただ泣きじゃくりながら、その腕を引っ張ることしか出来ない・・・。
そして、母は微笑の中、力強い目でルージュを見つめて優しく語りかけた。
「私の可愛い娘・・・ルージュ、あなたは私の本当の娘のよう・・・あの子を頼みましたよ」
「お母さん・・・」
ディマゴラスは今にもシャトルバスを踏み潰そうとしていた
「あなた達をいつでも見守っていますよ、さぁ!お逃げなさい!!」
最後には、枯渇したモトゥブの大地に座り込み、ルージュはゆっくりと潰されていくシャトルバスを、涙でかすむ目でぼんやりと見ていることしか出来なかった・・・。
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ディマゴラスの足元で鬼神のごとく次々と剛拳を繰り出すニーナさん、私もツインセイバーでPAを駆使して戦います。
「こ、こんなモンスターが私達の仲間を!?」
わたしの言葉にも無言で戦闘を続けるニーナさん・・・
その目からは涙がこぼれていました。。。
「よくも、よくも・・・お母さんを!」
「!?」
ディマゴラスの太い腕でなぎ払われ、幾度となく吹き飛ばされる私達。
ディマゴラスから発せられる雷撃に身体を焼かれながらも、倒れては起き上がり、二人では敵う相手では無いと分かっていても、なお攻撃の手を緩めず戦います。
オルガさんが順平さんを安全な場所へ移すまで・・・私はそう思っていました。
所持していたメイト類も底を尽き、そろそろこちらの限界が近づいた頃オルガさんの声が聞こえました。
「ニーナ!ハルルさん!もう大丈夫、撤退するよ!!」
「はい!」
オルガさんの声に呼応し、ツインハンドガンでディマゴラスを牽制しつつ後退する私の横で、ニーナさんは・・・
「まだだよ!こいつを倒すんだ!!」
その声と同時にニーナさんを強烈な青い閃光が包みます、ナノブラスト・・・ビーストである私たちの種族だけに与えられた特殊な変身能力。
その並外れた攻撃力やスピードと引き換えに、体力と精神力を極限まで消耗し、限られた変身時間の中でその使用者の寿命さえも縮めてしまう両刃の剣・・・。
閃光の中で身体がみるみる巨大化し、全身は炎のように赤く、長い足は大地を猛スピードで駆け抜け、指先の鋭い爪は鋼鉄さえも切り裂くビーストへと姿を変えるニーナさん・・・。
そして、ニーナさんの強力な一撃はディマゴラスの戦意を喪失させるのに充分すぎるものでした。
ディマゴラスはその大きな翼を広げ、地平線に夕暮れの紫のグラデーションがかかるモトゥブの空に消えていきました。。。
ガーディアンズ・モトゥブ支部より救護班が現地に到着する頃には夜のとばりも降りて、辺りはすっかり暗くなっていました。
「これで、順平も一安心だね」
「そうですね、順平さんが無事で本当に良かったです・・・でも・・・」
「他の仲間達を思うと、複雑だけどね」
「はい・・・」
ニーナさんは何の言葉もないままに背中を丸め、膝を抱えてうずくまったままです・・・。
「ニーナさん、大丈夫ですか?ナノブラストの消耗は並大抵なものではありません、カーゴ内で休まれてはどうですか?」
「いいの・・・ありがとう・・・」
小さく呟くように、顔もあげずにニーナさんは続けます
「オルガさん、ハルルさん、あなた達に聞いてもらいたいことがあるの」
「ん?ちょうどいいや、私もニーナに聞きたいことがあるんだよ」
「私も・・・ですか?何でしょう?」
「うん・・・全てを話すよ。私と順平・・・いいえ、ブラムとのこと・・・」
次回・真実~後編~に続きます
☆あとがき☆
大変長らくお待たせいたしました、第4話やっと掲載です(^-^;)
ストーリーはエピローグまで出来ているのですが、それを文章で構成するのはやはり大変な作業ですね。。。
第4話まで終了し、分かったことがあります・・・えと、当初予定していた5話ほどの構成では無理なことがわかりました(+_+)
いったい何話構成になるんだろう・・・予想も出来ないけれど、マイペースで最後まで書き上げたいと思います。
今後はニーナさんの告白から、Olgaさん、私、そして順平さんの関係にそれぞれに違った展開を用意しています。
良い意味で、皆さんの予想を裏切るお話しが書きたいなと思っています(*^-^*)
それでは今夜もグラールに行ってきまーす♪
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